バーチャルオフィスのトラブル事例7つと2つのリスク|契約前の対策まとめ

- バーチャルオフィスは安くて便利と知っているが、事前にどんなトラブルがあるか知っておきたい
- 借りようと思うが、今一つ決断できない
- すでに契約したが、リスクやトラブルを把握して、先に手を打ちたい
初めてバーチャルオフィスを借りようと考えている方には、「どんなトラブルがあるのか」を想像するのが難しいかもしれません。実は、仕組みを理解しておけば、トラブルや問題が起こることはそれほど多くありません。しかし、バーチャルオフィスも人が運営しているため、まれに人為的なミスや不可抗力の事故が起こります。
この記事では、利用者から聞いた話などをもとに、トラブルの事例を包み隠さず解説します。
トラブル:人為的なミスや小規模な問題。リスク:「不確実性」「予想通りにいかない可能性」で、不可抗力の範囲が多く、努力で防ぐことが難しいもの。この記事では、このように分けて解説します。
この記事の結論
バーチャルオフィスのトラブルで最も多いのは、郵便物に関するものです。ほとんどは、契約前の確認と、事前の連絡で防げます。
- トラブル7つ:アポなし訪問、郵便の誤送・遅配、受取のタイムラグ、社名変更の連絡漏れ、名義違いの返送、電話代行のクレーム、電話番号の検索結果
- リスク2つ:突然の閉鎖・倒産、悪徳業者や詐欺への悪用
- 対策の基本は、「重要な郵便が届くと事前に伝える」「請求書の日程を把握する」「電話番号をネット検索する」
目次
バーチャルオフィスでありがちな7つのトラブル
ここでは、利用者から聞いた事例を含めて、ありがちなトラブルと、その対策を紹介します。
アポなし訪問で「怪しい」と思われ、契約がなくなった
企業間の取引では、訪問の前に、電話やメールでアポイントをとるのが一般的です。しかし、「近くに寄ったので」と、アポなしで訪れる取引先もいます。そんな取引先がいたら、要注意です。
人材系の広告代理店を営むAさんは、以前、西新宿の拠点のバーチャルオフィスを契約していました。新規開拓が中心の営業で、企業の人事担当者にアポをとって訪問し、求人広告の出稿を提案するスタイルでした。
ある中規模IT企業の人事担当のBさんと信頼関係を築き、エンジニア募集の提案を依頼されました。提案書と見積書を出し、ほぼ受注の直前まで進みました。
ところがある日、Bさんは新卒の会社説明会で、Aさんの名刺の住所に近い場所を訪れ、あいさつがてら立ち寄りました。訪れると、表札には別の会社の名前があり、オフィスは無人で、人の気配もありませんでした。バーチャルオフィスをまったく知らなかったBさんは、強い不信感を持ったようです。
後日、Aさんが事情を説明し、Bさんもバーチャルオフィスのことは理解しましたが、取引額が数百万円だったこともあり、結局、取引は成立しませんでした。
バーチャルオフィスが取引不成立の原因とは限りません。しかし、無人のオフィスで良い印象を残さなかったことは確かです。
編集部取引先によっては、名刺の住所がバーチャルオフィスだと、あらかじめ伝えておくほうがよい場合があります。大事な取引先ほど、先に伝えておきましょう。
郵便物の誤送・遅配
郵便物がバーチャルオフィスに届いているのに、転送されなかったり、遅れたりするのは、代表的なトラブルです。こうした誤送・遅配は、多くの事業者で過去に起きています。
原因は、毎日多くの郵便物が届き、すべて人の手で処理されるためです。バーチャルオフィスは、安く契約できる反面、1つの拠点で多数の契約を抱えます。届く郵便物は、非常に多くなります。
業務の流れは、まず届いた郵便物を契約者に連絡し、契約者ごとに仕分けして保管し、その後まとめて発送します。この仕分けと発送は人が行うため、人為的なミスが起きます。似た名前の会社がある場合や、契約名義と違う宛名で届く場合に、誤送や遅配につながることがあります。
編集部重要な郵便物が届くと分かっているなら、あらかじめバーチャルオフィスに伝えておくことをおすすめします。
受取のタイムラグで、請求書の確認と支払いが遅れる
バーチャルオフィスでは、郵便物は、一度バーチャルオフィスに届いてから転送されるため、受け取りが少し遅くなります。多くの事業者では、郵便物はすぐには転送されず、週や月ごとに決まった日にまとめて発送されます。
通常の郵便物なら大きな問題になりませんが、請求書などの支払い関係だと、受け取りが遅れて、支払期限に間に合わないおそれがあります。支払いが遅れると、取引先との信頼関係にも影響します。請求書の電子化は進んでいますが、書面の請求書や、税金の納付書、社会保険の納付書など、支払いに関わる郵便物は、まだ多くあります。
編集部請求書などは、いつ届くか、支払期限はいつか、転送の発送日はいつかを把握しておきます。受け取りが遅れそうなら、すぐに転送してもらいましょう。
社名・屋号の変更を伝えず、郵便が戻される
社名の変更や、個人事業主の屋号の変更を、バーチャルオフィスに連絡しないと、郵便物が送り主に返される場合があります。どのバーチャルオフィスでも、契約している社名以外の宛名で届いた郵便物は、受け取らず、郵便局に引き取ってもらい、「宛先不明」として返送されるのが原則です。
この問題は、法人より、個人事業主に多く見られます。屋号の変更が簡単にできるためです。また、契約時に屋号を決めておらず、あとから屋号を決めて使うケースも多く、その連絡を忘れがちです。
編集部屋号を変えたら、すぐにバーチャルオフィスへ連絡しましょう。
契約名義と違う宛名で、郵便が戻される
ほとんどのバーチャルオフィスでは、1つの契約につき、「1つの名義(個人または会社)」が設定されます。契約名義以外の名前で送られた郵便物は、通常、受け取られません。
例えば、Aさんが、自分の会社Bのためにバーチャルオフィスを契約したとします。Aさんが、その住所を、個人のオークションの荷物の受け取り先にも使い、そのことを事業者に伝えていなかったとします。すると、個人名義のAさん宛の荷物は、契約の対象外のため、受け取りを拒否される可能性が高いです。契約名義の解釈は、事業者ごとに異なるため、注意が必要です。
編集部契約内容(1契約につき、何名義まで使えるか)を、事前に確認しておきましょう。
電話代行のクレーム・緊急対応
バーチャルオフィスのオプションの、電話代行サービスを使った場合の問題です。電話代行は、契約者あての電話をオペレーターが受け、用件を確認して契約者に伝えるサービスです。
ときどき問題になるのが、緊急対応が必要なクレームの電話です。かけてきた人は、オペレーターを、契約者の会社の社員と誤解し、「すぐに対応して」と求めることがあります。しかし、オペレーターは、担当者に連絡を取る以外の対応はできません。かけてきた側からは、「社員なのに融通がきかない」と見えて、不満を抱くことがあります。
編集部緊急の連絡が予想される場合は、どのタイミングで、どう連絡してもらうかを、あらかじめ決めておくと安心です。
電話番号を検索すると、以前の利用者が表示される
電話転送サービスの電話番号は、NTTなどから取得しますが、ほとんどの場合、新規に発行された番号ではありません。過去に他の会社や個人が使っていた、リサイクルされた番号を使うのが一般的です。ただし、直近で使われていた番号ではなく、一定期間使われていなかった番号のため、以前の利用者あての誤った電話は、ほとんどありません。
問題になるのは、インターネットです。以前の利用者が、移転や廃業などで番号を解約しても、その会社のホームページに電話番号が残っていたり、ポータルサイトに旧会社名と番号が記録されていたりします。番号を検索した人が、あなたの会社と以前の会社を関連づけて、誤解する可能性があります。
編集部電話番号が提供されたら、必ずネットで検索して、以前の利用者の情報が出ないか、確認しましょう。
バーチャルオフィスの2つのリスク
突然の閉鎖・倒産
バーチャルオフィスの事業は、顧客が固まれば収益が安定する一方、急に売上が伸びる業種ではなく、新規参入も多いため、競争が激しくなっています。事業者が閉鎖や撤退をする例もあります。
もしバーチャルオフィスが閉鎖すると、その住所を使えなくなり、次の3つの影響が出ます。
- 印刷物・ホームページの変更:他のバーチャルオフィスや賃貸オフィスへ切り替え、会社案内・名刺・営業資料の再印刷や、ホームページの住所変更が必要になる。顧客への住所変更の連絡も必要で、費用と手間がかかる
- 登記の変更:バーチャルオフィスを法人登記の住所にしていた場合は、新しい住所への変更登記が必要になり、司法書士への依頼費用や登記費用がかかる
会社にも寿命があります。東京商工リサーチの調査では、2025年に倒産した企業の平均寿命は23.5年でした。バーチャルオフィスに限らず、あらゆる会社は、いつか終わりが来る可能性があります。そのリスクを、事前に考えておくことが大切です。
出典 倒産企業の平均寿命は23.2年、3年ぶりに延びる|TSRデータインサイト|東京商工リサーチ tsr-net.co.jp/data/detail/1201208_1527.html住所が悪徳業者や詐欺に利用される可能性
バーチャルオフィスは、安く契約できるため、詐欺目的の人や悪徳業者に利用されることがあります。現在は、犯罪収益移転防止法などにより、顔写真付きの身分証明書や、所定の手続きがないと契約できません。そのため、昔に比べれば、犯罪に利用されるケースは減りました。ただし、クレームの多い悪徳業者や、詐欺に近いグレーゾーンの企業が使うことは、今もあります。
警察沙汰になる例はまれですが、過去には、振り込め詐欺のグループに利用され、マスコミで報道されたこともあります。メディアで報道されると、詐欺に関わった住所が、SNSやインターネットで拡散されるおそれがあります。バーチャルオフィスの住所は共用のため、問題のある業者が1社でもいると、同じ住所を使う他の企業も影響を受ける可能性があります。
多くの事業者は、法律に則って厳しい審査をしていますが、悪徳業者も巧妙な手口で契約するため、完全には防ぎきれません。契約前に、事業者の審査体制を確認しましょう。
見分け方 信頼できる事業者かを見分けるサイン(選び方の記事)よくある質問
バーチャルオフィスで、最も多いトラブルは何ですか?
郵便物に関するトラブルが最も多い傾向があります。誤送・遅配、受取のタイムラグ、社名や屋号の変更による返送、契約名義と違う宛名の返送などです。重要な郵便物が届くと分かっているなら、事前にバーチャルオフィスへ伝えておきましょう。
郵便物の遅れで、支払いが間に合わなくなるのを防ぐには?
請求書が届く日、支払期限、バーチャルオフィスからの発送日を把握しておきます。受け取りが遅れそうなら、すぐに転送してもらうよう依頼しましょう。請求書は、電子化できる取引先には、電子で受け取る方法もあります。
契約名義以外の宛名の郵便物は、受け取ってもらえますか?
多くの事業者では、契約名義以外の宛名の郵便物は、受け取らず、送り主に返送されます。契約名義の扱い(1契約で何名義まで使えるか)は事業者ごとに異なるため、契約前に確認してください。屋号や社名を変更したときも、すぐ連絡しましょう。
バーチャルオフィスが閉鎖したら、どうなりますか?
その住所を使えなくなるため、名刺・会社案内・ホームページの住所変更や、再印刷が必要になります。法人登記の住所にしていた場合は、変更登記も必要です。閉鎖に備えて、運営会社の実績を確認しておきましょう。
詐欺に利用される住所を、避けるにはどうすればいいですか?
契約時の本人確認や審査が、きちんと行われている事業者を選びます。犯罪収益移転防止法にもとづく本人確認が形だけの事業者は、悪用される可能性があります。審査の有無や、本人確認の方法を、契約前に確認してください。
まとめ:トラブルは、契約前の確認と事前の連絡で防げる
バーチャルオフィスのトラブルは、やはり郵便物に関するものが最も多い傾向です。次の3点は特に大事なので、契約するときに留意してください。
- 大事な郵便物が届くと分かっていたら、事前にバーチャルオフィスへ伝え、どう処理するかも伝える
- 請求書が届く日・支払日・バーチャルオフィスの発送日を、把握しておく
- 転送電話や電話代行を申し込んだら、提供された番号をネット検索し、以前の利用者の情報が出ないか確認する
