バーチャルオフィスの審査とは|必要書類・審査の流れ・NG業種をわかりやすく解説

- バーチャルオフィスの審査では、何を確認されるのか知りたい
- 個人と法人で、必要な書類は何か知りたい
- 審査に通らないのは、どんなときか知りたい
近年、起業家やフリーランスが、住所を低コストで用意できるバーチャルオフィスを利用しています。ただし、契約前には審査があり、書類の提出や事業内容の確認を求められます。
この記事では、経済産業省のQ&Aなどの公的資料をもとに、審査の背景、必要書類、確認される内容、通らないケースをまとめました。
この記事の結論
バーチャルオフィスの審査は、犯罪収益移転防止法で義務づけられた「取引時確認」が基本です。そこに、事業者ごとの独自の確認(業種・風評など)が加わります。
- 審査の目的は、住所や電話番号を犯罪に利用させないことです
- 個人は本人確認書類、法人は登記事項証明書と担当者の本人確認書類などを用意します
- 住所が実在するか、転送不要の書留で確認されることがあります
- 業種や風評も確認されます。基準は事業者ごとに違い、公開されません
目次
審査は、なぜ行われるのか:犯罪収益移転防止法の義務
バーチャルオフィスは、低コストで住所や電話番号を用意できます。その手軽さから、詐欺などの犯罪に悪用されるおそれがあります。
そのため、犯罪収益移転防止法では、郵便物を受け取るサービス(バーチャルオフィス、レンタルオフィス、私設私書箱など)を行う事業者を「特定事業者」と定めています。経済産業省のQ&Aによると、事業者には次の義務があります。
- 取引時確認:契約時に、本人や取引の目的などを確認する
- 確認記録の作成・保存:契約終了から7年間保存する
- 取引記録の作成・保存:取引から7年間保存する
- 疑わしい取引の届出:疑わしい場合は、経済産業大臣に届け出る
- 確認を的確に行うための措置:情報を最新に保つ、社内の規程を整えるなど
私たちが「審査」と呼んでいるものの中心は、このうちの取引時確認です。これに加えて、事業者が独自の基準(業種・風評など)で確認します。
事業内容を詳しく聞かれると、戸惑うかもしれません。ただ、確認をきちんと行う事業者ほど、悪用されにくい住所になります。同じ住所を使う自分の信用を守ることにもなります。
審査で提出する書類
必要な書類は、事業者によって少しずつ違います。ここでは、法律上の考え方にもとづく、一般的な内容を紹介します。
個人・個人事業主の場合
個人事業主は、法人格がないため、個人と同じ方法で確認されます。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 本人確認書類 | 運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、パスポート、在留カードなど(顔写真付きが基本) |
| 補完書類 | 本人確認書類の住所が現住所と違う場合に、現住所がわかる書類を追加(公共料金や税金の領収書など。発行から6か月以内) |
顔写真のない書類(住民票の写しなど)だけの場合は、追加の確認が必要になります。たとえば、もう1種類の書類を出したり、転送不要の郵便物で確認したりします。なお、健康保険証は、本人確認書類としての有効期限が2025年12月1日に切れており、使えません。
法人の場合
| 書類・申告 | 内容 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 法律上は、確認日前6か月以内に発行されたもの。事業者によって、履歴事項全部証明書、3か月以内など、より厳しく指定されることがある |
| 取引担当者の本人確認書類 | 実際に契約する個人の書類。個人の場合と同じ |
| 委任状など | 取引担当者が代表者でない場合に、取引権限があることを確認する |
| 実質的支配者の申告 | 法人を実質的に支配する人(議決権の4分の1を超える議決権を持つ人など)を申告する |
| 事業内容の確認 | ホームページや定款などで確認(定款は本人確認書類には使えないが、事業内容の確認には使える) |
登記事項証明書を紙に打ち出しただけの登記情報は、本人確認書類として認められません。事業者が登記情報提供サービスなどから、直接確認する必要があります。
審査で確認される5つのポイント
実際の確認は、次のような内容で行われます。審査の基準や方法は開示されず、事業者によって異なります。
住所が実在するかを、転送不要の書留で確認する(個人)
バーチャルオフィスの申し込みは、対面ではなく、メールやオンラインで行うのが一般的です。その場合、送られてきた書類が、なりすましや架空の住所でないかを確認する必要があります。
そこで、本人確認書類に記載された住所に、契約書などを「転送不要」の書留郵便で送り、受け取れるかを確認する方法があります。ほかに、専用ソフトで顔写真と本人確認書類を撮影して送る、オンラインの本人確認(eKYC)を行う事業者もあります。
会社と担当者の住所が実在するかを確認する(法人)
法人の場合は、登記事項証明書に記載された会社の所在地に、転送不要の書留で書類を送って確認するのが一般的です。あわせて、契約する取引担当者の住所にも、同じ方法で送ります。
会社と担当者、両方の実在を確かめる仕組みです。
法人は、契約者と会社の関係を確認する
契約する取引担当者が、その法人のために契約する権限を持っているかを確認します。担当者が代表者でない役員や社員の場合は、委任状などが必要です。
また、法人の実質的支配者(議決権の4分の1を超える議決権を持つ人など)を、申告により確認します。事業者によっては、電話で在籍の確認をすることもあります。
取引担当者の権限の確認に、社員証は使えません。また、登記事項証明書が使えるのは、取引担当者が代表権を持つときに限られます(経済産業省の案内)。
業種・目的を確認する
契約前には、取引の目的と、職業(法人は事業の内容)を必ず確認されます。目的は、「自宅で郵便物を受け取れるのに、なぜバーチャルオフィスを使うのか」の理由です。
- プライバシー・セキュリティー対策のため
- 賃借料や保管のコストを減らすため
- 出張や海外居住などの連絡先として使うため
「郵便物の受取」だけでは、目的として不十分とされています。
また、次のような業種は、多くの事業者で契約できません。これは、法律による一律の禁止ではなく、事業者ごとの規約や判断です。
風評を確認する
バーチャルオフィスは、同じ住所を多くの会員が使います。風評の悪い会社が入ると、ほかの会員の信用にも影響します。
そのため、事業者は、会社名や代表者名でネットやSNSを検索し、風評を調べることがあります。業種や法律に問題がなくても、悪評が多い場合は、契約を見合わせることがあります。ホームページがなく事業内容がわかりにくいときは、追加の質問をされることもあります。
編集部申し込む前に、自社のホームページや事業内容の説明を用意しておくと、確認がスムーズに進みます。
事業者は、疑わしい取引の届出をしたことや、しようとしていることを、申込者に伝えてはならないと定められています。そのため、審査に通らなかった具体的な理由が示されないことがあります。
2027年4月から、本人確認の方法が変わります
犯罪収益移転防止法の施行規則が改正され、2027年4月1日に、本人確認の方法が見直されます。TMI総合法律事務所の解説によると、次のような変更です。
- 非対面では、本人確認書類の外観画像と自撮り写真を照合する方式や、書類の写しを複数枚送る方式などが廃止される
- マイナンバーカードなどのICチップの読み取りが、本人確認の中心になる
実際の手続きは、事業者ごとに異なります。申し込むときの案内に従って、手続きを進めてください。
出典 TMI総合法律事務所|犯罪収益移転防止法施行規則の改正による本人確認方法の厳格化についてよくある質問
バーチャルオフィスの審査では、何を確認されますか?
法律にもとづく取引時確認として、本人(法人は名称や所在地)、取引の目的、職業や事業内容などを確認されます。法人は、実質的支配者も確認されます。これに加えて、事業者が独自に、業種や風評などを確認します。
個人事業主は、どんな書類を用意すればいいですか?
個人と同じ方法で確認されます。運転免許証やマイナンバーカードなどの、顔写真付きの本人確認書類を用意します。書類の住所が現住所と違う場合は、公共料金や税金の領収書など、現住所がわかる書類も必要です。
法人の契約で、担当者が代表者でない場合はどうなりますか?
担当者に、その法人のために契約する権限があることを確認するため、委任状などが必要になります。あわせて、担当者本人の本人確認書類の提出と、担当者の住所の確認も行われます。
審査に通らないのは、どんなときですか?
書類の不備や、住所が確認できないとき、事業者が契約できないとしている業種のとき、ネット上の悪評が多いときなどがあります。基準は事業者ごとに異なり、公開されないため、契約前に規約を確認しておきましょう。
審査のない(緩い)バーチャルオフィスはありますか?
取引時確認は、法律で事業者に義務づけられています。経済産業省は、違反している事業者に対して、是正命令などの措置をとることができます。審査が甘い事業者は、悪用されるリスクも高くなるため、選ばないほうが安全です。
まとめ:審査は、書類をそろえて、事業内容を説明できれば怖くない
バーチャルオフィスの審査は、犯罪への悪用を防ぐための、法律にもとづく確認です。書類を正しくそろえて、事業内容を説明できるようにしておけば、必要以上に心配することはありません。
- 本人確認書類の住所と現住所を、そろえておく(違うときは補完書類を用意する)
- 取引の目的と、事業内容を説明できるようにしておく(ホームページがあると確認がスムーズ)
- 事業者ごとの契約できない業種を、申し込む前に確認する
