企業のダウンサイジングとコスト削減|固定費から見直す方法とバーチャルオフィスの活用

- 景気が悪化して、経費を見直したいが、何から手をつければよいかわからない
- オフィスや支店の費用を減らす方法を知りたい
- リモート勤務とバーチャルオフィスに移るとき、何に気をつければよいか知りたい
物価の上昇や景気の変化で、経費の見直しを迫られる企業は少なくありません。コスト削減は、削減効果の大きいところから手をつけないと、手間ばかりかかって成果が出にくくなります。
この記事では、経費を削減効果の大きい順に整理し、特に効果の大きいオフィスの見直しとバーチャルオフィスの活用を、移行前の確認事項つきで解説します。
この記事の結論
経費削減は、固定費(オフィス賃料・人件費)→契約・通信・広告→消耗品の順に見直すと、効果が出やすくなります。オフィスは、リモート勤務とバーチャルオフィスで大きく下げられる場合があります。
- 紙やインクの節約より、賃料などの固定費の見直しが効果的です
- バーチャルオフィスに移るなら、登記・許認可・社会保険の届出先・就業場所を、先に確認します
- 人員整理は最後の手段で、整理解雇の4要素を満たす必要があります
目次
経費は、効果の大きい順に見直す
紙やインクの節約は、効果が小さく、手間がかかります。金額の大きい固定費から見直すのが、コスト削減の基本です。
- 固定費:オフィス賃料、人件費。金額が大きく、削減効果も大きい
- 契約・通信・広告:電気料金、通信費、広告費。契約の見直しで下げられる
- 消耗品:紙、インク、備品。効果は小さいが、すぐ始められる
オフィスの見直し(最も効果が大きい)
面積と場所を見直す
まず、今のオフィスが、人数に対して広すぎないかを確認します。事務所衛生基準規則は、労働者を常時就業させる室の気積(設備の占める容積などを除いた空間)を、1人につき10立方メートル以上と定めています。面積の決まりではなく、この基準を満たせば、必要以上に広くする必要はありません。
近くに賃料の安い物件があれば、引っ越しも選択肢です。契約期間や、原状回復の費用は、事前に確認しましょう。紙やインクの節約より、賃料を下げるほうが、効果は大きいです。
出典 厚生労働省|事務所衛生基準規則リモート勤務とバーチャルオフィスに切り替える
リモート勤務が可能な業種なら、賃貸オフィスをやめて、バーチャルオフィスの住所に切り替える方法があります。打ち合わせが必要な社員は、コワーキングスペースや貸し会議室を、必要なときだけ借ります。
費用の目安は、バーチャルオフィスが月数百円〜5,000円前後、コワーキングスペースのドロップインが1時間300〜700円程度です(2026年9月時点の情報サイトの目安)。賃料、共益費、光熱費、通勤交通費が、大きく減る可能性があります。
リモート勤務が可能な業種は限られます。顧客の来訪が多い、設備や在庫を扱う、情報管理に厳しい要件がある、といった場合は、慎重に判断しましょう。
- 法人登記:本店の住所を変える場合は、登記の変更が必要。登記に使えるプランかを確認する
- 許認可の事務所要件:許認可が必要な事業では、実体のある事務所が求められ、バーチャルオフィスの住所は使えないことが多い
- 社会保険・労働保険の届出先:事業所の所在地の扱いは、年金事務所や労働基準監督署、ハローワークで確認する
- 就業場所と労務のルール:リモート勤務の就業場所、勤務時間の管理、通信費の負担などを、就業規則や労働条件で整える
- 取引先・顧客への案内:住所や連絡先の変更を、事前に知らせる
支店を縮小して、バーチャルオフィスを連絡先にする
たとえば、東京に本社、大阪に支店がある会社が、支店を閉めて、大阪の連絡先としてバーチャルオフィスを使う方法があります。支店のあった地域で、取引先との連絡を保てます。
支店を廃止するなら、支店の廃止登記を行い、取引先には、支店の閉鎖と、新しい連絡先をきちんと知らせます。バーチャルオフィスの住所を、実体のある支店のように見せると、取引先に誤解を与えるおそれがあります。
契約・通信・広告・消耗品の見直し
オフィスの次に、契約ごとの見直しを進めます。
広告・ホームページの費用
ネット広告は、アクセス解析で、効果を確認できます。効果の低い広告は、停止しましょう。ホームページの制作・運用や、マーケティングの費用は、金額が見えにくく、業者の言い値になりがちです。複数の会社の見積りを比べ、高い場合は交渉します。
電気料金・通信費
- 契約の見直し:電力会社やプランを比べる。契約電力が実態に合っているかも確認する
- 節電:不要な電源を切る。照明をLEDにする
- 省エネ設備:エアコンなど、省エネ性の高い設備は、長期的に電気代を抑えられる
消耗品
- 用紙:両面印刷や、電子化で、使用量を減らす
- インク・トナー:エコモードを使う。互換品は、保証や品質を確認して選ぶ
- 備品:まとめ買いや、価格比較で、単価を下げる
補助金・助成金を確認する
補助金や助成金は、費用の一部を補うもので、コスト削減と近い効果があります。ただし、申請の条件や期限があり、採択・支給には審査があります。また、多くは後払いで、先に費用を立て替える必要があります。
- 雇用調整助成金:景気の変動で、雇用の維持が必要なときに、休業手当などの一部を助成する制度。新型コロナの特例は、令和5年3月末までの対象期間で終わり、現在は通常の制度です(厚生労働省)
- 国・自治体の補助金:設備投資、IT導入、省エネなどの補助金があります。「jGrants」などで、募集中の制度を確認できます
- 商工会議所・自治体の窓口:地域の制度は、窓口で教えてもらえます
制度は、毎年見直されます。申請の条件、期限、対象になる経費を、必ず最新の情報で確認しましょう。
人員の見直しは、慎重に
人件費は大きな固定費ですが、人員整理は、従業員の生活に大きく影響するため、最後の手段です。経営が厳しいという理由だけで、解雇が認められるわけではありません。
経営上の理由による解雇(整理解雇)が有効かどうかは、裁判例で、次の4つの要素が考慮されます。
- 人員削減の必要性:経営上、人員を減らす必要が、客観的にあるか
- 解雇を避ける努力:役員報酬の削減、残業の削減、配置転換、希望退職の募集など、ほかの手段を尽くしたか
- 人選の合理性:対象者の選び方が、公正で合理的か
- 手続きの妥当性:対象者や労働組合に、事情を説明し、協議したか
客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効になります(労働契約法16条)。
人員の見直しを検討するときは、社会保険労務士や弁護士に相談し、手続きを確認してください。従業員側の相談窓口として、労働局の総合労働相談コーナーもあります。
よくある質問
コスト削減は、何から始めるのがよいですか?
金額の大きい固定費から始めるのが効果的です。オフィスの賃料や人件費を見直したあと、電気・通信・広告などの契約、最後に消耗品を見直します。
賃貸オフィスをやめて、バーチャルオフィスにできますか?
リモート勤務が可能な業種なら、選択肢になります。ただし、許認可が必要な事業では、実体のある事務所が求められ、使えないことが多くあります。登記、社会保険・労働保険の届出先、就業場所の扱いも、移る前に確認してください。
支店をバーチャルオフィスにしても、問題ありませんか?
支店を廃止して、連絡先として使う形なら選択肢になります。支店の廃止登記を行い、取引先に、閉鎖と新しい連絡先を知らせましょう。実体のある支店のように見せる使い方は、誤解を招くため避けてください。
経営が厳しいとき、雇用調整助成金は使えますか?
雇用調整助成金は、景気の変動などで事業活動が縮小し、雇用を維持する事業主向けの制度です。新型コロナの特例は終了し、現在は通常の制度で、要件があります。詳しくは、厚生労働省の案内や労働局で確認してください。
まとめ:固定費から見直し、移る前に確認する
コスト削減は、削減効果の大きい固定費から見直すのが基本です。オフィスは、リモート勤務とバーチャルオフィスで大きく下げられる場合があります。ただし、許認可や届出先、労務のルールなど、移る前に確認することがあります。人員の見直しは、最後の手段として、慎重に進めましょう。
- 固定費(賃料・人件費)→契約・通信・広告→消耗品の順に、見直す
- バーチャルオフィスに移る前に、登記・許認可・届出先・就業場所・取引先への案内を確認する
- 補助金は最新の条件を確認。人員整理は、整理解雇の4要素を踏まえて、専門家に相談する
